Japanische Klassiker mit Furigana
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きどうむかしがたり
綺堂むかし語り
岡本 綺堂
Lesen Sie 綺堂むかし語り (きどうむかしがたり) von 岡本 綺堂 (おかもときどう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 183.656 Zeichen · 363 Bildschirme
「その頃は町もたいそう賑やかだったと、年寄りが云いますよ。」
「つまり筑波の町のような工合だね。」
「まあ、そうでしょうよ。」
霧はいよいよ深くなって、路をさえぎる立木の梢から冷たい雫がばらばらと笠の上に降って来ました。草鞋はだんだんに重くなりました。
「旦那、気をおつけなさい。こういう陰った日には山蛭が出ます。」
「蛭が出る。」
わたしは慌てて自分の手足を見廻すと、たった今、ひやりとしたのは樹のしずくばかりではありませんでした。普通よりはやや大きいかと思われる山蛭が、足袋と脚絆との間を狙って、左の足首にしっかりと吸い付いていました。吸い付いたが最後、容易に離れまいとするのを無理に引きちぎって投げ捨てると、三角に裂けた疵口から真紅な血が止め度もなしにぽとぽとと流れて出ます。
「いつの間にか、やられた。」
こう云いながらふと気が付くと、左の腕もむずむずするようです。袖をまくって覗いて見ると、どこから這い込んだのか二の腕にも黒いのがまた一匹。慌てて取って捨てましたが、ここからも血が湧いて出ます。案内者の話によると、蛭の出るのは夏季の陰った日に限るので、晴れた日には決して姿を見せない。