Japanische Klassiker mit Furigana
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きどうむかしがたり
綺堂むかし語り
岡本 綺堂
Lesen Sie 綺堂むかし語り (きどうむかしがたり) von 岡本 綺堂 (おかもときどう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 183.656 Zeichen · 363 Bildschirme
なにしろ碌々に足がかりも無いような高いなめらかな岩の間を、長い鉄のくさりにすがって降りるのですから、余り楽ではありません。案内者はこんなことを云って嚇しました。
「いまは草や木が茂っていて、遠い谷底が見えないからまだ楽です。山が骨ばかりになってしまって、下の方が遠く幽かに見えた日には、大抵な人は足がすくみますよ。」
成程そうかも知れません。第二第三の石門をくぐり抜ける間は、わたしも少しく不安に思いました。みんなも黙って歩きました。もし誤まってひと足踏みはずせば、わたしもこの紀行を書くの自由を失ってしまわなければなりません。第四の石門まで登り詰めて、武尊岩の前に立った時には、人も我れも汗びっしょりになっていました。日本武尊もこの岩まで登って来て引っ返されたと云うので、武尊岩の名が残っているのだそうです。そのそばには天狗の花畑というのがあります。いずこの深山にもある習いで、四季ともに花が絶えないので此の名が伝わったのでしょう。今は米躑躅の細かい花が咲いていました。
日本武尊にならって、わたしもここから引っ返しました。当人がしいて行きたいと望めば格別、さもなければ妄りにこれから先へは案内するなと、警察から案内者に云い渡してあるのだそうです。