Japanische Klassiker mit Furigana
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きどうむかしがたり
綺堂むかし語り
岡本 綺堂
Lesen Sie 綺堂むかし語り (きどうむかしがたり) von 岡本 綺堂 (おかもときどう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 183.656 Zeichen · 363 Bildschirme
それはあらかじめお含み置きを願っておきたい。
わたしが脚本というものに筆を染めた処女作は「紫宸殿」という一幕物で、頼政の鵺退治を主題にした史劇であった。後に訂正して、明治二十九年九月の歌舞伎新報に掲載されたが、勿論、どこの劇場でも採用される筈はなかった。その翌年の二月、條野採菊翁が伊井蓉峰君に頼まれて「茲江戸子」という六幕物を書くことになった。故榎本武揚子爵の五稜郭戦争を主題にしたものである。採菊翁は多忙だということで、榎本虎彦君と私とが更に翁の依頼をうけて二幕ずつを分担して執筆することになった。筋は無論、翁から割当てられたもので、自分たち二人はほとんどその口授のままを補綴したに過ぎなかった。劇場は後の宮戸座であった。
それが三月の舞台に上ったのを観ると、わたしは失望した。私が書いた部分はほとんど跡形もないほど変っていた。私はそれを榎本君に話すと、榎本君は笑いながら「それだから僕は観に行かないよ」と云った。榎本君は福地桜痴先生に従って、楽屋の空気にもう馴れている人である。榎本君の眼には、年の若い私の無経験がむしろ可笑く思われたかも知れなかった。採菊翁自身が執筆の部分はどうだか知れないが、榎本君が担当の部分にも余程の大鉈を加えられていたらしかった。