Japanische Klassiker mit Furigana
ja-reading.com
Lesen Sie japanische Klassiker online mit Furigana. Filtern Sie nach JLPT-Niveau, tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung und übersetzen Sie einen Satz.
きどうむかしがたり
綺堂むかし語り
岡本 綺堂
Lesen Sie 綺堂むかし語り (きどうむかしがたり) von 岡本 綺堂 (おかもときどう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 183.656 Zeichen · 363 Bildschirme
土用に入ってまだ幾日も過ぎないのに、雁の来るのはめずらしい。群れに離れた孤雁が何かの途惑いをして迷って来たのかも知れないと思っていると、雁は雨のなかにふた声三声つづけて叫んだ。
しずかにそれを聴いているうちに、私の眼のさきには昔の麹町のすがたが泛かび出した。そこには勿論、自動車などは通らなかった。電車も通らなかった。スレート葺きやトタン葺きの家根も見えなかった。家根といえば瓦葺きか板葺きである。その家々の家根の上を秋風が高く吹いて、ゆう日のひかりが漸く薄れて来るころに、幾羽の雁の群れが列をなして大空を高く低く渡ってゆく。巷に遊んでいる子供たちはそれを仰いで口々に呼ぶのである。
「あとの雁が先になったら、笄取らしょ。」
わたしも大きい口をあいて呼んだ。雁の行は正しいものであるが、時にはその声々に誘われたように後列の雁が翼を振って前列を追いぬけることがある。あるいは野に伏兵ありとでも思うのか、前列後列が俄かに行を乱して翔りゆく時がある。空飛ぶ鳥が地上の人の号令を聞いたかのように感じられた時、子供たちは手を拍って愉快を叫んだ。そうして、その鳥の群れが遠くなるまで見送りながら立ち尽くしていると、秋のゆうぐれの寒さが襟にしみて来る。