Japanische Klassiker mit Furigana
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きどうむかしがたり
綺堂むかし語り
岡本 綺堂
Lesen Sie 綺堂むかし語り (きどうむかしがたり) von 岡本 綺堂 (おかもときどう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 183.656 Zeichen · 363 Bildschirme
秋になると、毎年それをくり返していたので、私に取っては忘れがたい少年時代の思い出の一つとなっているが、この頃では秋になっても東京の空を渡る雁の影も稀になった。まして往来のまんなかに突っ立って、「笄取らしょ。」などと声を嗄らして叫んでいるような子供は一人もないらしい。
雁で思い出したが、蝙蝠も夏の宵の景物の一つであった。
江戸時代の錦絵には、柳の下に蝙蝠の飛んでいるさまを描いてあるのをしばしば見る。粋な芸妓などが柳橋あたりの河岸をあるいている、その背景には柳と蝙蝠を描くのがほとんど紋切り型のようにもなっている。実際、むかしの江戸市中にはたくさん棲んでいたそうで、外国やシナの話にもあるように、化け物屋敷という空家を探険してみたらば、そこに年古る蝙蝠が棲んでいるのを発見したというような実話が幾らも伝えられている。大きい奴になると、不意に飛びかかって人の生き血を吸うのであるから、一種の吸血鬼と云ってもよい。相馬の古御所の破れた翠簾の外に大きい蝙蝠が飛んでいたなどは、確かに一段の鬼気を添えるもので、昔の画家の働きである。
しかし市中に飛んでいる小さい蝙蝠は、鬼気や妖気の問題を離れて、夏柳の下をゆく美人の影を追うにふさわしいものと見なされている。