Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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きどうむかしがたり

綺堂むかし語り

岡本 綺堂

Lesen Sie 綺堂むかし語り (きどうむかしがたり) von 岡本 綺堂 (おかもときどう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 183.656 Zeichen · 363 Bildschirme

Aozora Bunko

私たちも子供のときには蝙蝠を追いまわした。

夏のゆうぐれ、うす暗い家の奥からは蚊やりの煙りが仄白く流れ出て、家の前には涼み台が持ち出される頃、どこからとも知らず、一匹か二匹の小さい蝙蝠が迷って来て、あるいは街を横切り、あるいは軒端を伝って飛ぶ。蚊喰い鳥という異名の通り、かれらは蚊を追っているのであろう。それをまた追いながら、子供たちは口々に叫ぶのである。

「こうもり、こうもり、山椒食わしょ。」

前の雁とは違って、これは手のとどきそうな低いところを舞いあるいているから、何とかして捕えようというのが人情で、ある者は竹竿を持ち出して来るが、相手はひらひらと軽く飛び去って、容易に打ち落すことは出来ない。蝙蝠を捕えるには泥草鞋を投げるがよいと云うことになっているので、往来に落ちている草鞋や馬の沓を拾って来て、「こうもり来い。」と呼びながら投げ付ける。うまくあたって地に落ちて来ることもあるが、又すぐに飛び揚がってしまって、十に一つも子供たちの手には捕えられない。たとい捕え得たところで、どうなるものでもないのであるが、それでも夢中になって追いあるく。

その泥草鞋があやまって、往来の人に打ちあたる場合も少なくない。