Japanische Klassiker mit Furigana
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きどうむかしがたり
綺堂むかし語り
岡本 綺堂
Lesen Sie 綺堂むかし語り (きどうむかしがたり) von 岡本 綺堂 (おかもときどう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 183.656 Zeichen · 363 Bildschirme
鳶に油揚を攫われると云うのは嘘ではない。子供が豆腐屋へ使いに行って笊や味噌こしに油揚を入れて帰ると、その途中で鳶に攫って行かれる事はしばしばあった。油揚ばかりでなく、魚屋が人家の前に盤台をおろして魚をこしらえている処へ、鳶が突然にサッと舞いくだって来て、その盤台の魚や魚の腸なぞを引っ掴んで、あれという間に虚空遥かに飛び去ることも珍しくなかった。鷲が子供を攫って行くのも恐らく斯うであろうかと、私たちも小さい魂をおびやかされたが、それも幾たびか見慣れると、やあまた攫われたなぞと面白がって眺めているようになった。往来で白昼掻っ払いを働く奴を東京では「昼とんび」と云った。
小石川に富坂町というのがある。富坂はトビ坂から転じたので、昔はここらの森にたくさんの鳶が棲んでいた為であるという。してみると、江戸時代には更にたくさんの鳶が飛んでいたに相違ない。鳶ばかりでなく、鶴も飛んでいたのである。明治以後、鶴を見たことはないが、鳶は前に云う通り、毎日のように東京の空を飛び廻っていたのである。
鳶も鷲と同様に、いわゆる鷙鳥とか猛禽とか云うものにかぞえられ、前に云ったような悪いたずらをも働くのであるが、鷲のように人間から憎まれ恐れられていないのは、平生から人家に近く棲んでいるのと、鷲ほどの兇暴を敢てしない為であろう。