Classici giapponesi con furigana
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ふうりゅうたいへいき
風流太平記
山本 周五郎
Leggi 風流太平記 (ふうりゅうたいへいき) di 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 244.473 caratteri · 487 schermate
自分では寒さは感じなかったが、手指の先は凍えてきたし、足の指はもう感覚がないようであった。
こうして九番めまで来たとき、万三郎はぴたりと足を停めた。
人の声が聞えたのである。
正に人の声であった。彼はすばやく地面に身を伏せて、あたりへ眼をくばった。
夜廻りの者かと思ったが、提灯の灯は見えない。声も風には消されないで、ひとところで、同じ調子で聞えていた。
「あっ、――」
万三郎は低く叫んだ。
それは若い女の声であった。話しているのではなく、謡曲をうたっているらしい。いや慥かに、それは若い女性が謡曲をうたっている声であった。
――あの人だ。
万三郎はぐっと胸が熱くなった。
それはつなの声に相違ない。捕われているつなが、風雪の夜の、眠れない寒さを凌ぐために、独りで謡をうたっているのだ。彼は謡曲というものを知らないから、なにをうたっているのかわからなかった。しかし、夜半ひとり端坐して、静かにうたっているつなの姿は、想像することができた。
「つなさん、万三郎が此処にいるよ」
万三郎は口の中で、そっとこう呼びかけた。
「もうすぐ助けにゆくからね、もうすぐだよ」
涙がこみあげてきた。