Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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ふうりゅうたいへいき

風流太平記

山本 周五郎

Leggi 風流太平記 (ふうりゅうたいへいき) di 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 244.473 caratteri · 487 schermate

Aozora Bunko

芽ぐむ胸

一

正月の七日。――暦の上では春になったが、寒さはまだきびしく、川から吹きあげてくる夜風は、寒の内よりも却って凛烈である。

「どうしたんだろう」

おちづはそっと呟いた。

「いつも早く帰って来るのに、なにか間違いでもあったんじゃないかしら」

半次は三日に一度ずつ、深川の井伊邸へゆく、午前十時ごろにでかけて、大抵は日の昏れるまえに帰る。おそくとも七時を過ぎることはなかった。

金杉橋をはさんで、両岸には、船宿や居酒屋などが多かった。少し川上の将監橋の脇には、ひところ岡場所(私娼)めいたものが出来たりして、この界隈はずいぶん繁昌したものであった。

しかし松平越中守(定信)が老中になってから、しだいに取締りが厳しくなり、岡場所はもちろん潰されたし、船宿や居酒屋などでも、夜の八時以後は営業を禁じられてしまった。

だから、もうその時刻にはどこも店を閉めているので、あたりはひっそりと暗く、遠い犬の吠え声や、ときたまどこかで雨戸をあける音などが、深夜の物音のように聞えて来た。

道にはまだ往来の人があった。

東海道の本道だから、公用の使いらしい早駕籠も通るし、夜遊びにゆくとみえる人や、肩をちぢめて小走りに橋を渡る女もあった。