轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
さぶ
さぶ
山本 周五郎
「週刊朝日」 1963(昭和38)年1月4日号~7月5日号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 210,521 字 · 415 页
栄二はゆっくりあるいていった。灰焼場の建物のこっちに、油絞りの建物があり、そのまわりはかなり広い空地で、そこに人足や役人たちが、まばらな人垣をつくっていた。――こぶは油小屋の前にいた。双肌ぬぎになり、右手に掛矢を持って、血ばしった眼をぎらぎらさせている。裸の肩はまさに雄牛のような肉づきで、左の首の付け根にある瘤も、健康な肉の盛りあがりとしかみえなかった。腕から胸まで黒い剛毛がびっしりと生えているし、手先は人の倍もあるようだ。
「あぶないぞ」と人垣の中からどなる者があった、「やめろ、ぶしゅう」
栄二は人垣をぬけて前へ出た。よせ、戻って来い、と二、三人がどなった。栄二はいそぎもせず、おそすぎもしない足どりで、こぶのほうへ近よっていった。
「こんどはてめえか」こぶはそう云って、掛矢を持ち直した、「てめえも片輪者になりてえのか」
「待ってくれ、おれだ」と栄二は穏やかな声で云った、「――いつかの晩、南の海っぱたで会ったもっこ部屋の者だ」
こぶは眼をそばめて栄二を睨んだ。
「わけは知らねえが」と栄二は両手をひろげてみせながら云った、「――これだけやれば気が済んだろう。