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さぶ
さぶ
山本 周五郎
「週刊朝日」 1963(昭和38)年1月4日号~7月5日号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 210,521 字 · 415 页
八の一
と栄二はなお云った、「その三人のことも、なんとか穏便に話をつけるよ、なあ清さん、おめえが罰をくうならおれもいっしょに罰をくう、男と男の約束だ、わかってくれよ清さん」
清七は俯向いたままで頷いた。栄二は振り返って、役人たちにもう大丈夫という手まねをしてみせた。
八の一
「おらあ今年で三十一だ」と清七が重たい口ぶりで云った、「――二年めえにおとよと知りあうまで、女ってえものをてんで知らなかった、笑われるかもしれねえが、おらちっちえときから女がこわかった、こんなちっちゃな女の子でさえ、じっと顔を見ていると、いまにも口が耳まで裂けるような気がしたもんだ、――この話はもうしたっけかな」
「聞いたようだな」と栄二があいまいに云った、「おふくろさんと岩風呂へはいったときのことだな」
彼の国は上州のどことかで、貧しい百姓の三男坊に生れた。五つか六つのとき、村からほど近い谷川の奥へ母親に伴れられて湯治にいったことがある。そこは川に沿って岩の穴が幾つかあり、底から温泉が湧いており、屋根もなにもない野天風呂であった。清七が母親に抱かれて湯に浸っていると、あとから知らない女がはいって来た。