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さぶ
さぶ
山本 周五郎
「週刊朝日」 1963(昭和38)年1月4日号~7月5日号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 210,521 字 · 415 页
二人は川の近くに洞窟をみつけ、鳥や魚や、草の根、木の実など、喰べられそうな物をできる限り集めた。
二人はその土地の冬がどんなものか知らなかった。そして雪のくるまで砂金を採り続け、雪がきて作業ができなくなると、その洞窟の中へこもった。寒気のきびしさはかれらの想像を絶し、それをしのぐための火と食物は、たちまち減少していった。二人は逃げた一人のなかまを呪い、そのなかまを一人で出してやったことで、互いに相手を責めたり憎みあったりした。しばしば洞窟の外で毛物の咆える声や、動きまわるけはいが聞え、それが熊か狼かはわからなかったが、いずれにせよ二人は助からないものと諦めた。
こうして死ぬものと思いきったとき、三人の土民がかれらを捜しに来て、冬ごもりに充分な用具と食糧を渡した。土民たちの話によると、なかまの男はそれらの品を手に入れ、馬に積んで戻る途中、熊に襲われたのだそうで、土民たちにこの谷まで届けてくれと頼んだあと、まもなく死んだということであった。――砂金は二貫目もあった。松前藩の眼をかすめてやる仕事だから、正規な価格の交換はできないだろう。そのうえ国のはてともいうべき不便な土地で、物の値段も法外なものに違いないが、それだけの物資なら、持っていった砂金の半分以下でも余ったであろう、残りの砂金はどうなったか。