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さぶ

さぶ

山本 周五郎

「週刊朝日」 1963(昭和38)年1月4日号~7月5日号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 210,521 字 · 415 页

青空文庫

「すみよしでね、親方が亡くなったの」

「――どうして」栄二はどきっとしたような眼でおのぶを見た。

「どうしてっていうことはないでしょ、なんとかっていう病気で、足から腰のほうまで骨も肉も腐っちまうのよ」と云っておのぶは顔をしかめた、「――早くわかれば療治のしかたもあったんだそうだけれど、町のへぼ医者にはちんぷんかんだったのね、塗り薬でごまかしてるうちに手おくれになっちゃって、外科のなんとかいうえらい先生に診てもらったときは、もうどうしようもないっていうの」

「そいつはまた、ひでえ医者もあったもんだな」

亡くなってから今日が十一日めだ、と云いながら、おのぶは手に持った茶碗を下に置いた。

「夫婦っきりで子供もなし、田舎は遠いところなんですって」とおのぶは続けた、「おかみさんはすっかり力をおとしちゃって、まるで病人みたいになっちゃってるの、仕込みから煮炊きからお店のことまで、全部あたしがやってるんだけれど」

栄二はちょっと待ってから問い返した、「けれど、――どうしたんだ」

「おかみさんがね、あたしに養女になってくれっていうの」

栄二がきいた、「のぶ公はいやなのか」