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さぶ

さぶ

山本 周五郎

「週刊朝日」 1963(昭和38)年1月4日号~7月5日号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 210,521 字 · 415 页

青空文庫

とさぶは珍しくくいさがった、「おらあ栄ちゃんが頼りなんだ、側に栄ちゃんがいてくれれば、どうやら自分なりの仕事もできるし、自分にも仕事ができるんだ、っていう気持にもなれるんだが、おれ一人っきりだと心ぼそくって頼りなくって、ついへまなことばかりやっちまうんだ」

「待てよ、さぶ」栄二が云った、「おれたちはもう子供じゃあねえ、お互いに二十五にもなったんだぜ」

「自分のとしぐらいは知っているよ」

「それならそんなにあまったれるな、二十五といえばもう子供の一人や二人あってもいいとしごろだ、おれが側にいなければ心ぼそいなんて、そんなあまっちょろいことで世の中が渡ってゆけると思うのか」

「おれはただ」とさぶはみじめに吃った、「おらあただ、栄ちゃんにここから出てもらいたいんだ、おれの云ったことがあまえたように聞えたらそいつは忘れてくれてもいい、おれのことなんか二の次でいいんだよ栄ちゃん、ただ、どうか頼むからここを出てもらいたいんだ」

「いやだ」と栄二は云った、「誰がなんと云おうと出るこたあできねえ」

さぶは持っていた包みを下に置き、まるい眼をみはって栄二をにらんだ。

「これほど頼んでもだめかい」