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さぶ
さぶ
山本 周五郎
「週刊朝日」 1963(昭和38)年1月4日号~7月5日号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 210,521 字 · 415 页
になってしまった。やつらは現に暴れだしているんだ、これ以上なにを待つことがあるのか、と栄二は思った。
「仕事なんて云えるようなものじゃないが」とさぶは話していた、「――おら正月から、ぼつぼつ頼まれ仕事をやり始めてるんだ、貸長屋のからかみとか、障子張りとかね、それについこのあいだ、筆屋の平蔵さん――知ってるだろう、おすえちゃんのおやじさんだが、その人の紹介で、下谷おかち町の経師屋からも仕事をもらうことになった、主人は茂三郎といってね」
「そりゃあよかった」と栄二はうわのそらで云った、「そりゃあきっとうまくいくよ」
「それでその、経師屋の主人と話したんだが、栄ちゃんが芳古堂にいたって云うと、それならいい仕事があるから、ぜひやってもらいたいって云うんだ」
「おれはまだここから出られないんだ、諄いぞさぶ」
「そうかもしれねえが」と云ってさぶは空いているほうの手で額を撫でた、「青木さんや岡安さんもそう云っていることだし、仕事の手順もついたことだし、ここの義理は義理として、いちおう出る気になっちゃあくれめえか」
栄二は返辞をしなかった。
「栄ちゃんは忘れてるかもしれねえが」