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さぶ

さぶ

山本 周五郎

「週刊朝日」 1963(昭和38)年1月4日号~7月5日号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 210,521 字 · 415 页

青空文庫

三の二

「縁遠い生れつきか」と栄二が云った、「暢気な人たちだな」

「だってほんとなんですもの」おそのは細い肩を左右にゆすり、眼尻で栄二をみつめながら云った、「――栄ちゃんあたしのことお嫁に貰ってくれないかしら」

三の二

下張りが終った明くる日は十五日の休みであったが、十二月のことで、仕事は続ける筈になっていた。にもかかわらず、朝めしを済ませてでかける支度をしていると、親方の芳兵衛が来て栄二を呼び、綿文へは五郎をやるから、おまえはゆかなくてもいいと云った。

「なぜですか」栄二は戸惑ったようにきいた、「私じゃあいけないんですか」

「五郎にさぶをつけてやる、おまえは少し休んでくれ」

「休むんですって」

「仕事はみんな手順がついてるから、差当りおまえにやってもらうこともないようだ」と芳兵衛は冷たい口ぶりで云った、「――もう日もないこった、仕事は来年のことにして、暮いっぱい休むがいいだろう」

「なにかわけがあるんですか、私がなにかしくじりでもしたんですか」

芳兵衛は眼をそむけた、「おれの云わないことはきくな、さぶ、五郎についてゆけ」

さぶは黙って頷き、芳兵衛は去っていった。さぶは仕事の包みを直しながら、栄二の顔をうかがうように見た。