轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
さぶ
さぶ
山本 周五郎
「週刊朝日」 1963(昭和38)年1月4日号~7月5日号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 210,521 字 · 415 页
気持もおちつかず、することが手につかない。まるで病気のようになってしまい、ときには手足がふるえだすことさえあった。帳場の銭箱から銭をつかみ出したのはそういうときで、去年の秋から十二、三たび盗みだしたろうか、食いたい一心で悪いことをしたとは思わなかった。それがこの二月、主婦のお由にその部屋へ呼ばれた。
「おかみさんは小言は云わなかった」と栄二は泥でも噛むように、顔をしかめながら云った、「――去年の八月五日と、昨日、おまえが帳場でやったことをあたしは見たよ、もうあんなことはおよし、欲しかったらあたしがあげるから、あたしのところへそう云っておいで、って、――それっきりだった」
お由は二度だけしか見なかったのだろうか、それともすっかり知っていて、わざと知らないふうをよそおったのか、いずれにもせよ、栄二は死ぬほど恥じ、もう店にはいられないと思った。自分をぬすっとだなどとは考えもしなかったが、銭箱から銭をつかみだした自分の姿が、あさましくて恥ずかしくて、そのまま店にいる気になれなかったのだ。
「だが、店をとびだしてどこへゆく」と栄二は続けた、「おらあ八つの年、大鋸町で夏火事にあい、両親と妹に焼け死なれた、おれ一人は白魚河岸へ釣りにいっていて助かったが、ほかに身寄りは一軒もなかった、おやじは伊勢から出て来たと云ってたが、