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さんごくし

三国志

吉川 英治

06 孔明の巻

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 161,356 字 · 323 页

青空文庫

四

この老母の自若たる態を。――老母が丞相をののしったのは、自分から死を求めている証拠です。丞相のお手にかかって殺されたら、子の徐庶は、母の敵と、いよいよ心を磨いて、玄徳に仕えましょうし、丞相は、かよわき老母を殺せりと、世上の同情を失われましょう。――そこに老母は自分の一命を価値づけ、ここで死ぬこそ願いなれと、心のうちでホホ笑んでいるにちがいありません」

「ううム、そうか。――しからばこの婆をどう処分するか」

「大切に養っておくに限ります。――さすれば徐庶も、身は玄徳に寄せていても、心は老母の所にあって、思うまま丞相に敵対はなりますまい」

「程※(「日/立」、第3水準1-85-21)、よいように計らえ」

「承知しました。老母の身は、私が大切に預かりましょう。……なお一策がありますが、それはまた後で」

彼は自分の邸へ、徐庶の母をつれて帰った。

「むかし同門の頃、徐庶と私とは兄弟のようにしていたものです。偶然あなたを家に迎えて、何だか自分の母が還ってきたような気がします」

程※(「日/立」、第3水準1-85-21)は、そういって朝夕の世話も実の母に仕えるようだった。