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うえすぎけんしん
上杉謙信
吉川 英治
「週刊朝日」1942(昭和17)年1月4日号~5月24日号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 129,102 字 · 256 页
二騎、三騎、また七、八騎。
辻を曲がり、また辻を曲がり、おそろしい勢いで、龍王道の木戸へ向って、疾走して行った士たちがある。
平常なら、何事かと、すぐ人々の注目をうけるところだが、この宵からの騒動中である。――あれも出陣の一組か。或いは、各地の味方へ、参陣の催促に行く早打ちかと、誰あって、怪しむものはなかった。いや、怪しんでいる遑もない空気だった。
「退け退けっ」
「木戸の扉を払え」
「木戸側を退いておれっ」
まるで、敵の中へ、斬りこんで行くような喚きだった。いわゆる武者声というものである。夜ながら、白い砂けむりを立てて約十騎、一団になって、街道口の木戸へ、ぶつかって来たのだった。
ここは、町の関門だ。滅多に通すべきではない。だが、真っ先の一騎が、
「火急の際、無断、まかり通る」
と、いきなり馬の背から降りて、そこの閂を勝手に外し、さっと押開いて、
「それ行け」
と、すぐまた鞍の上に跳びつくやいな、まるで弾丸のように駆け抜けて行った。
もちろん、番の将士は、
「待てっ」と、ささえ、
「何者だっ」
と、咎めることも怠りはしなかった。
しかし、次々と、関門を駆け抜けてゆく騎馬の士は、