轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

うえすぎけんしん

上杉謙信

吉川 英治

「週刊朝日」1942(昭和17)年1月4日号~5月24日号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 129,102 字 · 256 页

青空文庫

驟雨一電

矢や弾をかわすためにではない。

「信玄近くにあり」

と、思ったからである。

その信玄を見るまでは、ひたすら自分を謙信と敵の目に知られたくない。また、信玄以外の敵と渡りあいたくない。

故にその扮装も、滞陣中より一際質素にしていた。

黒糸縅しのうえに、萌黄緞子の胴衣を着け、白絹の頭巾で、面を行人包みにしていたに過ぎず、特に、大将らしい華美はどこにも見えなかった。

しかし駒は名馬放生、太刀は小豆長光の二尺四寸。

「信玄、何処に?」

と、炬のごとき眼をくばりながら、八幡境内の近くを駆け巡っていた。

ここまで来ると案外敵もつきまとわなかった。血眼してすれちがう将士は幾人もあったがよもや敵の大将謙信とは思いよる者もなかった。また謙信も眼もくれない。

ただ、信玄と、有無の勝負を――とばかり、そこらの杉落葉の上に仆れている旗や楯や雑多な兵具などを踏みこえ踏みこえ尋ねまわった。

このとき武田信玄は、太郎義信の隊を粉砕した敵の一手が、八幡の森の方へ、旋風のように通過したのをながめて、

「抑、敵はまた、何を計るか?」

と、怪しむように、傍らにいた三名の法師武者や数名の旗本と、一かたまりになって立騒いでいた。