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うえすぎけんしん
上杉謙信
吉川 英治
「週刊朝日」1942(昭和17)年1月4日号~5月24日号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 129,102 字 · 256 页
一手切
と思われる。
一手切
すでにわずかでも、鉄砲の影響があらわれ出した川中島の接戦では、当然、陣形の編成にも、それより前の陣組とは、備え立てがちがって来ている。
大体、鉄砲隊をまっさきに置き、次に弓隊、長柄隊、武者――という四段立てが常識となっていた。
そして、ふつうには、敵とのあいだ二、三町から、鉄砲隊が撃ちはじめる。
この距離では、弾はまだ届かないのであるが、武者声が、押太鼓と同じように、気勢を昂げる目的にまず撃つのである。
四、五十間になると、着弾が可能になる。旺に撃ち合う。
と、いっても、弾込めや、銃の掃除に、暇がかかるので、鉄砲組もおよそ、三列三交代ぐらいになって、撃っては、うしろへ退き、次の列に、装填して待っているのが代って前へ進んでは撃つ。そしてまた退く――という方法をとっていた。
そして、半町以内にまで迫りあうと、こんどは弓隊が、雨の如く矢を送る。
さらに十間と迫り、七間、五間と詰合ったとき、初めて長柄隊か槍隊かが突撃を開始し、ここに白兵戦となるのであるが、この際、二の手の戦法といって、急貝、早太鼓を打鳴らせば、足軽も士分も、すべて無二無三、敵中へ飛込んで、太刀、槍、無手、道具や戦法によらず、勝ちを制し、敵を圧す、いわゆる乱軍の状態に入るのである。