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けんきょうじゅなん

剣侠受難

国枝 史郎

「東京日日新聞」1926(大正15)年5月28日~11月14日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 195,479 字 · 394 页

青空文庫

親方に忠義な里人が、その親方の気に入っている、広太郎を気に入らない筈がない。広太郎と君尾の恋についても、里人は好感を持っていた。たまらないのは文三である。で、いつも機嫌悪く、広太郎と君尾の挙動ばかりを、白い眼をしてネメ廻した。

武備はドンドンはかどった。さあいつでもやって来い! 杉窪の里は活気に充ち、里人は腕をさすったりした。

さてある日のことである。江戸へ出して置いた物見の一人が、敵の行動を知らせて来た。

「巴御殿からチラホラと、天草一味の連中が、水戸街道へ入り込みましたぜ」

「敵の同勢約五十」これが第二の報告であった。すると銅兵衛はこういった。

「いやいやもっと来るだろう」

はたして第三の報告には「敵の同勢八十」とあった。

「いやいやもっと来るだろう」これが銅兵衛の意見である。はたして第四の報告には「敵勢大略百人」とあった。

「もうそれくらいでとどめたいものだ」こう銅兵衛はつぶやいた。

しかしその次の報告には「敵の同勢百五十人」とあった。

「ううむ、随分やって来るな」

「石標のところから真っ直ぐに、押しのぼって来る」という知らせがあった。

「正面から来るな、大胆至極、自信がなければ出来ないことだ。