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けんきょうじゅなん
剣侠受難
国枝 史郎
「東京日日新聞」1926(大正15)年5月28日~11月14日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 195,479 字 · 394 页
バンパイヤ
「これ、小女。酒を持って参れ」
この前後から十二、三人の人影、家の奥から店をながめ、打って出ようとひしめいていたが、どうやら誰かがとめたとみえ、いつか姿が消えてしまった。
「酒はどうした。酒だ酒だ!」
「もうよかろう。勘定だ」
すると小女が現われた。
「へえ、五両いただきます」
途方もない高い値段である。またゴテルかと思ったところ、例のお茶の水と呼ばれた武士、だまって小判を五枚並べた。一斉に立ち上がって出ようとした時、門口から客がはいって来た。ほかならぬ袴広太郎である。
バンパイヤ
どうしてこんな南蛮屋などへ、袴広太郎は来たのだろう? やはり金弥と同じように、偶然入り込んで来たのだろうか? それにしては様子が違う。何か一心に思い詰めたような決心の色が明らかに眉宇の間に現われている。思うところあって来たらしい。しかしそれはとにかくとして、南蛮屋の店へはいった以上、安穏ではいられまい。
乱暴な五人の侍が、見のがしておく筈はない。はたして五人の侍は、広太郎を見ると顔を見合わせ、元の席へ引き返した。
ここは南蛮屋の奥座敷、屋号に似つかわしい南蛮風の部屋で、青い絨緞、オレンジ色の壁、白堊の天井、黒檀細工の円卓、ギヤマン細工のランプなど、この時代には珍しい、異国趣味が漂っている。