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けんきょうじゅなん

剣侠受難

国枝 史郎

「東京日日新聞」1926(大正15)年5月28日~11月14日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 195,479 字 · 394 页

青空文庫

塀外の声

あえて皮肉ではござらぬが、若い娘ごに取り入ろう、こういうお心でござるなら、歌舞伎物まね音曲話、そういったやわらかい話の方が効果てき面と思われますがな。第一その方が貴殿に似合う。似合わぬものはつまりニセ、いか物はいけない、いか物はいけない!」思い切って突っぱねた。

と、ムラムラと金弥の顔へ、怒気が浮かんだものである。

塀外の声

金弥の顔色が変ったのは、広太郎にとっては痛快であった。しかしこれ以上やり込めるのは、大人気ないと思ったので、クルリと背を向けて舞二郎へ向かった。

「舞二郎殿、おいそがしいかな」

「いや、例によって平凡で」

「ちょっといつもよりお顔色が悪い、勉強が過ぎるのではあるまいかな」

「ナニ、それほど勉強しません」

「それがよろしい、おなまけなさい」

「これ以上なまけたら馬鹿になる」

「いやそれ以上勉強されては、この拙者などはお話しさえ出来ぬ」

「そういわれるとこの拙者、なんだか大変学者のように見える」

「学者でござるとも、立派な学者で」

小松原舞二郎、生来の多病。それで剣道は自ら廃し、好める学問の道にむかい、林家の弟子として錚々たるもの。広太郎と同年で二十三歳、それでいてすでに代講をする。