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けんきょうじゅなん
剣侠受難
国枝 史郎
「東京日日新聞」1926(大正15)年5月28日~11月14日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 195,479 字 · 394 页
スペイン猫
縁まで下がってきた城之介、ヒョイと飛ぶと庭へ下り、引きそばめると鉄杖の先、片手に握ると六尺の長さ、胸の長さを加えると、八尺となって余りがある、ゆるやかに斜めに振り上げたが、妖精じみた窪んだ眼で、狙いをつけたは広太郎の右肩、
「もういけめえ! 贄にしてくりょう!」
例の嗄れ声! 響かせると同時に、鉄杖あやまたず肩へ落ちた。
癒着していない傷があった。そいつがわれてしたたる血!
「むっ!」というと袴広太郎、縁にへたばったがそれも一瞬、血溜りの中へ横倒し、悶絶をして動かなくなった。
「ほほう」というと城之介、例によってジャランと鉄杖を立て、それへ寄っかかって見おろしたが、「片がついたというものさ。死にゃアしまいね、え、まさか?」片手を出すとグイと伸ばし、広太郎の鼻息を窺った。「大丈夫だア」と眼を上げた。と、眼についたは巻軸である。「思わぬ獲物! すなわち二兎さ」グイと懐中へねじ込んだ時、小門にあたって女の足音。
スペイン猫
小門にあたって女の足音!
「や、帰って来たお町めが! が、今逢っては面白くない。玉をさらってひとまずのがれ、さてそいつをおとりにして、口説きおとすが上分別さ、第一おいらが広太郎を、血だるまにしたと知ったら、お町めあべこべに憎むだろう。