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けんきょうじゅなん
剣侠受難
国枝 史郎
「東京日日新聞」1926(大正15)年5月28日~11月14日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 195,479 字 · 394 页
奇怪な柱
島原城之介に相違あるまい。何かいおうと思ったが、物をいうさえ大儀であった。で広太郎はだまっていた。とまた城之介の声がした。
「ここはな」となんとなく、嘲笑的に、「貴殿、当分のお住居でござる。で、一応部屋の様子を、お目にかけて置く必要がござる。まず正面をお見詰めなされ」
立ちあがるらしいけはいがした。と、とびらでも開けるような、ギイ――ッという音が聞こえて来た。とたんに一つの光景が、広太郎の眼前に展開された。形にして穹窿型、光にして琥珀色、それが朦朧と現われたのである。すなわち広太郎の正面へ、別の部屋が姿を現わしたのである。
だがなんとその部屋の怪奇なことは!
広太郎にとってはこの部屋の様は、一生忘れることが出来なかった。とはいえ、それとて一口にいえば、城之介の奉ずるイスラエル教の、単なる道場に過ぎなかったのではあるが。
奇怪な柱
広太郎の眼前に展開されている部屋は、広さおおよそ二十畳敷きぐらい、自然と出来た岩窟で、その正面の奥深いところに、人工を加えた祭壇があり、その上に巨像が立っていた。
その巨像が異様なのである。
けもの神のような裸体の男、女怪のような裸体の女、まさしく二体ではあったけれど、一体のようにくっついている。