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けんきょうじゅなん

剣侠受難

国枝 史郎

「東京日日新聞」1926(大正15)年5月28日~11月14日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 195,479 字 · 394 页

青空文庫

こがれる心

はいって来たのは料理人、やはり仲間の一人である。

「イスラエルのあねご、お客様で」

「え、私に客だって? おかしいねえ。だれだろう?」

「立派なお武家様でございますよ」

「あっ、驚いたなあ、もう来やがった」これは忠三のつぶやきである。

こがれる心

イスラエルのお町を訪ねたのは、ほかならぬ袴広太郎であった。帳場の前へたたずみながら、ジリジリとして待っている。

「逢わなければならない。どんなことをしても。まだかなまだかな、どうしたんだろう?」

五人の不気味の侍が、ジロジロ見ているのにも気がつかない。

「どうしても逢ってお願いする。是が非でも納得させなければならない」地団太を踏むばかりである。

発狂ではござらぬ。呪縛でござる。さよう島原城之介のな。さがして城之介にお逢いなされ。呪縛を解くようおたのみなされ。お京様の狂乱はなおりましょう。その節巻軸を奪い取り、当屋敷へご持参なさい。お京様をお渡し致しましょう。……こういう天草時行の言葉を、ほとんど夢中で聞くようにして、巴御殿を飛び出したのは、今日の午前のことである。

何より真っ先に訪ねたのは、懇意の与力勘十郎の屋敷で、広太郎はこういってたのみ込んだ。