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けんきょうじゅなん
剣侠受難
国枝 史郎
「東京日日新聞」1926(大正15)年5月28日~11月14日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 195,479 字 · 394 页
忠三の煩悶
忠三の煩悶
公孫樹におわびを申し上げ、さて忠三走り出した。
「こうなりゃアおれが投げ状で、島原の残党天草時行、浅草安宅町にとぐろを巻き、凶徒を集めて陰謀中、早くお手入れなさるよう……などと奉行所へ密告し、その捕り物のどさくさ紛れに、島原城之介を入り込ませ、大事な巻軸を盗ませた事も、ムダになったというものさ。つまらねえなあ何ということだ! 天草の手へ返した以上、めったに二度とは取ることは出来めえ。いめえましいなあどうかしてえものだ。といってどうにもなりゃしねえ、お町のあねごにかかったひにゃあ、おいら手も足も出ねえんだからな。オイ忠公や、いい子だね、悪あがきせずに行っておいで。そうして巻軸を返して来な! こういわれるとこの忠公、自然と足がヒョコヒョコ出て、ご覧のとおり走っている。魅力だね、魅力ってやつだ。だが魅力って何だろう? さあわからねえ、見当もつかねえ。別嬪さんということかな? ほれちゃったという事かな? うんにゃ、少しばかり違うようだ。そりゃアそうと城之介め、寝椅子にころがっちゃアいねえかな? ナニサ寝椅子はころがるものさ。ころがって悪いとはいわねえが、もしそのそばに緋縮緬が? ワーッ、いけねえ、勘忍してくれえ?」