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けんきょうじゅなん

剣侠受難

国枝 史郎

「東京日日新聞」1926(大正15)年5月28日~11月14日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 195,479 字 · 394 页

青空文庫

根岸の屋敷

「そ、そいつは申されません」

文三にわかに後じさりをした。

「それはまたなぜでございますな?」金弥さもさも不思議そうにきく。

と、その時どこからともなく、フフンという冷笑の声がした。

根岸の屋敷

フフンと冷笑の声はしたが、二人の耳へははいらなかったらしい。

「何ゆえと申しましておさむらい様、うかうかとお屋敷をあかそうものなら、先廻りをしてあなた様が、私のこがれている君尾様を、横取りなされないものでもなし……で、お屋敷はあかされませんなあ」文三用心がいいのである。

「それなら大丈夫でございます」金弥別に怒りもしない。「私にはお京様がございますので」

「あっ、さようでございましたね。あの、ところでお京様は、まだ手がかりがございませんので?」

「八百八町広いお江戸を、五十ぺんほどもまわりましたかしら。いまだに手がかりはございません」

「さぞお疲れでございましょうな」

「他人の足のようになりました」

「ほんとにご同情申し上げます」

「はい、そうしてあなたへも」

丁寧に二人辞儀をした。またションボリと向かい合っている。と金弥がいい出した。

「今夜もお探しでございますかな?」

「はい、これから参ります。