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けんきょうじゅなん
剣侠受難
国枝 史郎
「東京日日新聞」1926(大正15)年5月28日~11月14日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 195,479 字 · 394 页
と兵庫を呼ぶ。「そちの献策で小松原家から京姫を取り寄せはしたものの、どうやらこいつは失敗らしいぞ! 銅兵衛を訪ねて君尾と逢い、親子姉妹のなのりをしよう、この計画も失敗らしいぞ! 君尾も死ぬ銅兵衛も死ぬ! 予感がするぞ! そんな予感が!」
「大丈夫でございます。大丈夫!」頼宣に引き添った牧野兵庫、「銅兵衛殿はあれほどの豪勇、めったに負けはしますまい」
「いやいや、それはわからない! 君尾はどうだろう? 姫はどうだろう?」
「銅兵衛殿の息のあるかぎり、君尾姫にはご安泰。見越しをつけるべきかと存ぜられます」
「ともかくも急げ、のっ立てろ!」
森があって森を出た。と、カーッと火の光! 天を染めて真っ赤である。
「や、火事だ! 火をかけたな! 里が焼かれる! 牧野、牧野、姫を背負え! 京姫を背負え!」
ドッと五十人駈け上がった。破壊された鉄砲、裂かれた陣幕、天草時行の陣営があったが、正雪一味に破られたとみえる。そこをトッ走ると盆地の縁、見下ろせば一面火の海だ!
子供の泣き声、女の悲鳴、剣戟の音、ガラガラガラ、建物の崩れて落ちる音! 火の底から聞こえてくる。渦巻きあがる黒煙り! その中を駈けめぐる無数の人馬! と、一つの人影が、盆地の斜面を駈け上がって来た。