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けんきょうじゅなん
剣侠受難
国枝 史郎
「東京日日新聞」1926(大正15)年5月28日~11月14日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 195,479 字 · 394 页
広太郎の死骸?
静かである。まだ静かだ。
その時山上から足音がした。忍び寄るような足音である。と人影が現われた。さっき逃げた二人の武士だ。
「おい」と一人がささやいた。「死んでいるようだ、たおれている」
「うん」ともう一人がささやき返した。「どれ、とどめでもさしてやるか」
スルスルと一人近寄った。ポンと足で蹴ってみた。広太郎動かない。
「よし」というとそのさむらい、広太郎の死骸にまたがった。片足あげて横顔を踏み、抜き身の切っ先ユルユルとおろし、耳のつけ根をぶッつりと! 刺そうとした時一条の捕り縄、群葉を抜いてスルスルスル、蛇のように走り出たが、さむらいの首へ巻きついた。
「うまいぞ、忠公!」とかん高い声、木立の蔭からひびき渡った。
広太郎の死骸?
群葉を抜いて飛び出した縄に、首を巻かれた一人の武士、
「ヒッ」と叫ぶとひっくり返った。ズルズルズルズルと引きずられる。縄がしばられるからである。
「ヤッ」と仰天したもう一人の武士、麓を目がけてかけ出した。と、その前へ一人の虚無僧、木立の蔭から飛び出した。
「悪党!」と一声、銀声! あがった尺八、風を切った。
「ガッ」という悲鳴、額をわられ、武士はフラフラとよろめいた。