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けんきょうじゅなん
剣侠受難
国枝 史郎
「東京日日新聞」1926(大正15)年5月28日~11月14日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 195,479 字 · 394 页
正史編纂
「どれ?」と忠三胸をおさえた。「まるで早鐘でもついているようだ。……何しろあぶない。早く逃げよう」スルスルと膝ではった時、老人の声がまた聞こえた。
「光殿、光殿。間違っても、逃げる賊を捕えてはなりませんぞ」
「おれはどうにも動けなくなった」またもや忠三ベッタリと、畳へ食いついた時である。「ではいよいよあすの晩、傾城塚へ参りましょうかな」こういう老人の声がした。
正史編纂
傾城塚へ行こうかという、老人の声を聞いた時、早引の忠三「おや」と思った。それは最近めっきりと、噂にのぼっている塚だからで、時々女の泣き声が聞こえてくるということである。
少年の声がすぐ聞こえた。「お供することにいたします」
すると老人の声がした。「やっぱりわしにはあの塚は、南朝に関係ある武将などの、寵姫かないしは夫人などの、古塚のように思われますがな」
「さていよいよ掘ってみて、曲玉や管玉に出られたのでは、いささか失望にございますな」これは少年の声である。
「いやいやそれとて結構でござる。一国の正史を編もうとするには、それくらいの障害はやむをえません」
「これはいかにも御意のとおり」
ここでしばらくしんとなった。