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けんきょうじゅなん

剣侠受難

国枝 史郎

「東京日日新聞」1926(大正15)年5月28日~11月14日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 195,479 字 · 394 页

青空文庫

「しかし私など若年で……」

「年など考えてはいけませんな。よいと思ったらなさるがよろしい」

「はい」とおとなしい返辞が聞こえた。またしばらく静かになった。

忠三には見当がつかなかった。

「塚をあばくっていうのだから、大泥棒かと思ったら、今度は歴史をあむんだそうだ。それじゃア二人とも学者なのかな? 紀州の叔父上って誰のことだろう?」

その時老人の声がした。

「勢力をおさえてもいけませんが、無理に進めてもいけませんな。自然自然に移るのを、徐々に進めてゆかなければ、当人どもはよいにしても、はたが迷惑いたしますよ。ご覧なさい明朝は潰れました。そうして清朝が起こりました。しかし支那の四百余州は、決してくらしよくはなりません。とうとう私など逃げて来ました。……少し部屋の中が籠ったようです。どれふすまでもあけましょう」

仰天したのは忠三である。たまるものかと這い出そうとした。とスルスルとふすまが開き、さっと灯し火がさしてきた。

「これこれ若者、逃げないでもよろしい。何か物でもほしいのか」

「どう致しまして、とんでもないことで」

忠三おずおず眼をあげたが、「まあどうだい、この部屋は!」