轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
けんきょうじゅなん
剣侠受難
国枝 史郎
「東京日日新聞」1926(大正15)年5月28日~11月14日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 195,479 字 · 394 页
おそらくこの世にはおりますまい。幸い生きているにしても、二度と逢うことの出来ないような、遠くの土地にでもおりましょう。やはりあきらめなければなりますまい。だが……」というと自嘲的になった。「だがいったいなんのために、事新しくこんなことを、いい出したかといいますと、一切合財今日においては、もうもうそういう過去のことは、私の心から稀薄になった。少なくも稀薄になろうとしている。――ということを申しあげたいからで。しかしこんなことをいい出して、それがいったいなんになるのだ? とこう反問されますと、ちょっと困るように見えますが、その実一向こまりませんので。というのは順序として、あなたと私との共住みのことに、話が移るからでございますよ」
「一緒にこそ住んではおりますものの、夫婦ならぬ夫婦ではございませんか」お町の声はさびしそうである。
それには広太郎は答えなかった。
「私にとりましては生命の恩人、決しておろそかには存じません」
「ただそれだけでございましょうか」お町不足そうにせまって行く。
「私を愛してくださいました。私を看病してくださいました。私を放そうとなさいませんでした。