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けんきょうじゅなん

剣侠受難

国枝 史郎

「東京日日新聞」1926(大正15)年5月28日~11月14日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 195,479 字 · 394 页

青空文庫

学者として立つことさえ出来るのである。顔色あおく、身体やせ、話す声なども弱々しい。が、すみ切った光ある眼、敏感らしいしまりのある口。頭脳の明晰と相まって、その心は広く厚く、老成した君子のおもかげがある。広太郎ほどの人間でも、舞二郎には一目置き、むしろ兄事しているのである。

「拙者などより広太郎殿、貴殿の方が世間が広い、面白い話はござらぬかな」

「さようさ」といった広太郎、先夜の出来事を思い出した。

「一つあります、意外のことが、世間には物騒なやつがある。拙者ひどい目にあいましたよ」

で、捕り物のあったこと、不思議な人間に斬り立てられたことを、かいつまんで物語った。

「ほほう」と舞二郎それを聞くと、驚きの目を見張ったが、「捕り物の内容ご存知かな?」

「いやいやトンと存じませんな」

「邪教徒の巣窟を襲ったのだそうで」

「ははあ邪教徒? ではキリシタン」

「さようさようキリシタンで」

「で、結果は? 一網打尽かな?」

「主領をはじめ五、六人の者が、うまくのがれたということで」

「ふうむなるほど、それでわかった。隅田で出あったあのくせ者、恐らくそいつらの一人でござろう」

「さよう、話のご様子ではな」