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けんきょうじゅなん
剣侠受難
国枝 史郎
「東京日日新聞」1926(大正15)年5月28日~11月14日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 195,479 字 · 394 页
……今は今を楽しみましょう。流れるままに、引かれるままに。……」
肩と肩とが寄り合った。首と首とがめぐらされた。きっと唇が合うのだろう。
庭木のこずえから夕日が消え、宵やみが襲って来ようとしている。
権十の姿が現われた。
「イスラエルのあねご、おいでかね。親方の使いで参りやした。一体全体何がなんでえ! こうどなれと申しました。寮住まいはようげしょうが、南蛮屋だってようげしょう! 袴様はようげしょうが、忠三だってようげしょう! 是非南蛮屋へ来てくだせえ! うしゃアがれ! まだいたのか! ひっちかられてしまいやした。至急南蛮屋へおいでくだせえ!」
庭先に立っていったものである。
さてこの頃南蛮部屋では、忠三、寝椅子にころがりながら、こんなことを考えていた。
「あねごが来るのだ、あねごがよ! イスラエルのあねごがおいでになるのだ! そこでおいらは立ちあがり、あねごへ寝椅子を奉る。と、あねごがやんわりと、そこへお腰をかけられる。忠さんその後はご無事かえ? などとおっしゃるに相違ない。そこでおいらは『へい』といって、ひとつはにかんでみせるかな。うんにゃウンと威張ってやる! そうしてノッケから巻くし立ててやる。