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けんきょうじゅなん

剣侠受難

国枝 史郎

「東京日日新聞」1926(大正15)年5月28日~11月14日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 195,479 字 · 394 页

青空文庫

が、心配はご無用だ。殺しはしねえ。それだけは安心! 殺すとお町に怨まれる。怨まれた日にゃアこっちが損、損のことならやらないがいい。おれの考えはほかにある。手前を玉に引き上げて、あのお町めをアブアブさせ、もがき廻るところへつけ入って、のっぴきならず落とすのさ。……手前の焦がれる広太郎、かえしてやるからいうことを聞け、どうだどうだとやらかすのさ。みっしり利こうぜこの目算! さてお町さえ手に入れたら、手前なんかには用はねえ。うしゃアがれと突っ放す! ということになるんだなあ。……まずこのくらいでいいだろう。そろそろ料理に取りかかろう。おれは案外正直者さ、先に計画をぶちまけて、それから手段にかかるんだからなあ。それ!」

というと鉄杖を、グイとばかりに突き出した。と、経机が飛んできた。袴広太郎投げたのである。

「おっとあぶねえ」とたたき落とした。「これこれなんだ、とんでもねえ奴だ! 机には罪はない筈だ。これまで二人で寄っかかり、厄介をかけた机じゃアねえか。いかに不用になったとはいえ、そう没義道に扱わねえがいい。ソレ!」と鉄杖をまた出した。

とたんに飛び上がった広太郎、そばの刀へ手をかけると、スルリと引き抜いたものである。