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けんきょうじゅなん

剣侠受難

国枝 史郎

「東京日日新聞」1926(大正15)年5月28日~11月14日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 195,479 字 · 394 页

青空文庫

「血がね、なるほど、なくなりましたかね。で、なんですかい、ネロちゃんが、居縮んでしまったとおっしゃるので。ネロもよくねえ、たのみ甲斐がないや。ヤイ、ネロめエーッ」と毒づいた。

南洋鸚鵡の花ちゃんと、藪地の裾で狂っていたネロ。ネロめエーッとしかられたので振り返ったが、お町ではなくて忠三だと見ると、ミーンとも鳴かず背も低めず、また花ちゃんと狂い出した。つまり完全に無視したのである。

と純白のつばさをひろげ、ピョンと花ちゃんが飛びあがった。とネロちゃんも負けてはいない。背筋をうねらせるとポンと飛ぶ。とまた花ちゃんがピョンと飛ぶ。するとまたネロちゃんがポンと飛ぶ。そのつど月光がはね返り、水銀のようにチラチラする。

「だがね、あねご」と手を揉みながら、「寮からここまでは長道中、そうフンダンに血が流れては十石あろうと足りませんや。いずれポッツリポッツリと小出しに出たんじゃアありましょうが、それにしてもだ、もうこの辺で、ポッツリポッツリもやんだ方がいい。でなかったら命が持ちませんや。そうはいってもごもっとも。血のしたたりがなくなって、案内役が休んだでは、追っかけてゆくことが出来ませんからねえ。