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けんきょうじゅなん

剣侠受難

国枝 史郎

「東京日日新聞」1926(大正15)年5月28日~11月14日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 195,479 字 · 394 页

青空文庫

チッ、チッ、チッとなき声がする。とまた一羽やって来たらしい。二羽の小鳥の影がうつった。ふッと二羽が一緒になった。くちばしとくちばしが合わさった。だがすぐパッと消えてしまった。どこかへ飛んで行ったのだろう。かすかにゆれている立ち木の枝、それが障子にうつっている。

「いや、だがしかし浮世には、突発的のものはございませんよ」不意に三郎兵衛がいいだした。

「で、われわれが参りましたのも、突発的ではございません。順々に順を追ったあげく、参るべくして参りましたので。そこでひとつゆっくりと、ご談合することに致しましょう。が、内容は非常に簡単、二本の巻軸! ただこれだけで」

ジロリと将右衛門を見やったが、薄っ気味の悪い眼つきであった。「将右衛門殿、将右衛門殿。あの二本の巻軸へな、数行の隠語が現われましてござるよ」持っていた扇をサラサラとひらくと、パタパタと胸をあおぎ出した。あつくもないのにいや味な事をする。「お話し致そう、それまでの経路を」パチッと今度は扇をとじ、膝の上へ突っ立てた。それから話し出したものである。

空井戸の中?

皮肉をまじえた能弁をもって、柴田三郎兵衛話し出した。