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けんきょうじゅなん

剣侠受難

国枝 史郎

「東京日日新聞」1926(大正15)年5月28日~11月14日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 195,479 字 · 394 页

青空文庫

「後悔なさるなよ、袴氏……いやきっと後悔する……見たようなものだ、後悔されよう! ……貴殿に関してはこの数日、われら懸命に探ってござる。秘蔵の一品盗み取り、貴殿に鼻をあかせて見せる」

「よかろう」と広太郎投げるようにいった。

「盗みたければお盗みなされ」

「ふふん、その時……」

「馬鹿め!」

「何を!」新吾の顔に一瞬間、身振るいするような兇相が、ムラムラとばかり現われた。

帰ったあとで広太郎、吹き出さざるをえなかった。

「なんだろう、あいつ、変な奴だった。鷹野ではあるまいし、獲物獲物と、獲物のことばかりいっていたが、おれは知らないよ、そんなものは」

だが間もなく驚くべきことが、かれの身の上に振りかかってきた。

二日ほどたった深夜のこと、小松原家から人が来て、お京の紛失を告げたのである。

「ううむ」と広太郎、それを聞くと、手を握らざるをえなかった。「秘蔵の一品盗んでみせると悪武士め威嚇したが、さてはお京のことだったか」

大小ぶっこむと屋敷を出、辻駕籠に乗ると駈けさせた。

「舞二郎殿、真実かな※(感嘆符疑問符、1-8-78)」

小松原家へ駈けつけるやいなや、声を筒抜かせたものである。