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けんきょうじゅなん
剣侠受難
国枝 史郎
「東京日日新聞」1926(大正15)年5月28日~11月14日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 195,479 字 · 394 页
君尾をカセに
あの笑い声は非常によろしい。下賤廃残の人間には、まねをしようとて出来ません。高貴のうまれの証拠でござる。それに」というと光圀を見た。「そのおもざしがどことなく、光殿に似ているではござらぬかな。つまり従兄弟似というくらいに」
すると光圀うなずいたが、「それに私にはあの娘が、紀州の伯父上のおもざしに、似ているように思われます」
「さようさようその通りで」そこで朱舜水暗示的にいった。「杉窪の銅兵衛は紀州殿の家臣、君尾殿は銅兵衛の養女。そうして君尾殿のおもざしが、紀州殿に似ておられる。その紀州殿が杉窪の里へ、助太刀をしにおいでなされた。ということであってみれば、紀州殿と銅兵衛殿と、その間に、連絡がなければなりませんなあ」
「私にもそんなように思われます。……ひょっとすると、伯父上の、落胤などではあるまいかと」
「もしそうなら好都合で」
「は、好都合とおっしゃいますと」
「これは以前にも申しましたが、どうやら紀州殿のやり口は、平地に波瀾を起こされるようで。どうでもとめなければなりません。光殿からご忠告なさるがよろしい。ところが以前にも仰せられたが、光殿にはずっとご若年で、そのためご忠告しにくかろう。