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けんきょうじゅなん
剣侠受難
国枝 史郎
「東京日日新聞」1926(大正15)年5月28日~11月14日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 195,479 字 · 394 页
美しい夢
それが南朝の遺跡なら、この上もなく好都合であり、そうでなくとも結構でござる。とにかく一応伝説的の土地は、調べる必要がございますよ」
一行スタスタと歩いて行く。
この時君尾の一群れでは、面白い話がはじまっていた。
「妾、見ましたのよ、美しい夢を。ええ昨夜ね。韮崎の宿で」こういったのは君尾である。
「君尾様の美しい夢物語、これは聞きずてになりませんなあ。お聞かせくだされお聞かせくだされ」こういったのは新十郎といって、ずっと前から君尾の機嫌を、取り結んでいる若武士である。
「あるお方の夢なのでございますの。妾の大好きなあるお方のね」
「あッはん、さようで」といったものの、新十郎という武士興ざめたらしい。
「それはこうなのでございますの」
美しい夢
「それはこうなのでございますの」昨夜見たという夢物語、それを君尾話し出した。「妾の大好きなお方がね、行ってしまったのでございますの。高い高いお山へね。でもやっぱり下にいますのよ。ええ、にぎやかな町の中にね。お花畑が咲いていました。熊谷草、敦盛草、弁慶草や雪の下がねえ、虹のように咲いていましたの。鳥が飛んでいるじゃありませんか。