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けんきょうじゅなん
剣侠受難
国枝 史郎
「東京日日新聞」1926(大正15)年5月28日~11月14日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 195,479 字 · 394 页
広太郎剣をすてる
機嫌よくしゃべって走って行く。
「それにしても君尾様をあずかった、銅兵衛どんの死んだのは、私にとっては悲しみで。いい兄貴でございましたよ。だがマアそれも仕方がない。人間一度は死ぬものだ。生きているうちにお働き! ホイ、ホイ、ホイ、いいお天気! 明るいなあ、何もかも!」そこでうたい出したものである。「明るくなければいけません!」
「驚いたなあ」と広太郎、駕籠の中で胸へ腕を組んだ。
広太郎剣をすてる
駕籠の中で腕を組んだ広太郎、考え込まざるを得なかった。
「ほほうそれではお京様は、そんな身分であったのか。紀州大納言家妾腹の息女、なるほどなあ。それだからこそ、あんなにも品位が備わっているのだ。……だがそれにしても、小松原の家の娘になったのはなぜだろう? いやいやこれとてもよくわかる。つまり紀州大納言家から、親知らずで戴いて来たのだろう。……それにしてもだ。杉窪の里の、銅兵衛殿の娘ごの、君尾様までが同じように、紀州家の息女であろうとは? まるで俺には夢のようだよ。そうすると俺は双生の姉妹から、愛されたことになるのだなあ。そうしてこっちからも愛したってものさ。なんだかちょっと変な気がするなあ」