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けんきょうじゅなん
剣侠受難
国枝 史郎
「東京日日新聞」1926(大正15)年5月28日~11月14日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 195,479 字 · 394 页
で、世間の連中が、化け物屋敷だと吹聴する。――といった方が本当かもしれない。事実が顛倒して語られるところに、魑魅魍魎や化け物屋敷の、存在が許されるというものである。いったん存在が許されるや、神に氏子、仏に信者、そういうものができるように、取り巻きの連中が現われる。ひどい奴になると利用する。
「巴小路の化け物屋敷、そりゃあとてもすごいものだ。だがおれは驚かねえ、おれはそのそばに住んでいる。どうだえ、えらかろう、金をよこせ」
すると一両出すところを、二両出そうということになる。
巴小路の住人にとっては、巴御殿の存在は、とんだ金儲けの種なのであった。
金儲けの種だから大事にする。そこでセッセと宣伝する。次第まさりに巴御殿、出世せざるをえないではないか。で、このごろでは巴御殿、幻怪神秘のとばりを纒い、蟠踞するようになってしまった。そうしてちっとも不思議でないことには、宣伝をした氏子までが、どうやらこの頃では巴御殿を、超自然的建物と思うようになった。
ところがほんの最近に至って、驚くべきことが出現した。
金儲けの種で信仰のマトの、巴御殿に借り手がつき、かれらの縄張りを犯したことである。