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けんきょうじゅなん
剣侠受難
国枝 史郎
「東京日日新聞」1926(大正15)年5月28日~11月14日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 195,479 字 · 394 页
だがマアマア理屈はやめよう。とにかく剣というものは、ひどく捨てがたいものらしい。だから捨てなければならないものさ! そこで僕は捨ててしまった。人間として飛躍したよ。だって友よ、そうではないか。ぶちこわす方から足を洗って、造り出す方へ向かったんだからね。僕は非常に楽天家になった。ふさぎの虫なんかけし飛ばしてしまった。それは環境がいいからだ。木地師というものの生活は、全く人を神経質から救う。君は学者だ。やって来たまえ! 木地師なるものを研究してみたまえ。きっと得るところがあるだろう。ところで君はきくかも知れない、何をいったい造り出すのかと。荒々しい自然生の樹をたおし、人間に端的に必要な、日用品を造り出すのだよ。これは実際いいことだよ。『芸の術』という名のもとに、つや布巾をかけ、とくさをかけ、小粒な、まるまっちい、ピカピカ光る――そうでなければいぶし銀的の、たいして要でもない小道具類をつくり、威張りっこをするのが流行している、きょうこの頃の浮世には、わけてもこれはいい事だよ! だがマア皮肉はやめにしよう。妻はどうやらこの書面で、いかにも女性らしい美しい、自然描写をしたらしいが、そういうところもこの土地にはある。