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けんきょうじゅなん
剣侠受難
国枝 史郎
「東京日日新聞」1926(大正15)年5月28日~11月14日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 195,479 字 · 394 页
「元気がいいの。うん、ごろん棒」
「いてえいてえ。おおいてえ!」いなせの地廻りもがき出した。
「おそろしい力だ、おおいてえ! こんなに強いとは知らなかった。ワーッ、いけねえ、人殺しいい!」
「これこれ何だ、野暮な声を出すな。殺しはしない、折っぺしょるだけだ。取ったこの手を逆にひねる。するとメリメリと音がする。骨のつがいが離れるのさ。と腕がブランコになる。身体髪膚父母に受く、毀傷せざるは孝のはじめ、こんな格言もむだになる、可愛い女もだくことができない。生まれもつかぬ片端者! よいか、ごろん棒、折っぺしょるぞ」
いなせの地廻り真っ蒼になり、フーフー息ばかりついている。
「それとも拙者の忠告を入れ、今後南蛮屋へは来ないようにするか。誓えばゆるす。どうだ、どうだ」
「へえへえ承知致しやした。もう来ることじゃあございません。旦那様え、ごめんなすって」
「うんそうか、それなら許す。が、なんとかいったっけな、大名小路広小路、伊勢屋稲荷に犬の糞、江戸紫から錦絵まできらいなものは一つもねえが、二本差しだけは好かねえか」
「ありゃあ無駄の形容詞で」
「お前が本来むだじゃあねえか」
「そんなあんばいでございます」