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けんきょうじゅなん

剣侠受難

国枝 史郎

「東京日日新聞」1926(大正15)年5月28日~11月14日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 195,479 字 · 394 页

青空文庫

今があいつらの全盛時さ。あばれ放題あばれるがいいや、そのうちにこっちが勝ってみせる」

「などとおちついているうちに、口があいたらどうします」

「妾あ大丈夫と思うがねえ、そんな気遣いはまずなかろう。相手も大変な人間だが、あいつだってあのとおりの曲者さ、痛め吟味では口もあくまい」

「あっしにゃアなんだか心配でね。どうでしょう、いっそのこと、荒っぽい料理に取りかかっては」

「そいつこそ本当にあぶないよ。だって忠公そうじゃあないか。味方に五百人の人数があれば、敵には千の人数がある。それに味方がどうかというに、残念ながら烏合の衆さ。町人、百姓、ごろん棒、女子供に食い詰め浪人、一束いくらっていう人足だよ。ところがお前、あいつらときたら、一騎当千の武者だからねえ。それに親玉が浪人ながら、十万石のくらしをする、兵法の先生と来たひにゃア、どうあがいたって歯は立たないよ。まあまあもう少しながめていよう、待てば海路の日和ってね。古いようだが金言さ。金言は無駄にはできないよ。……ネロや、ここへおいで」

ミーンとなきながらスペイン猫、寝椅子の上へ飛び上がった。身体をうねらせ抱く拍子に、裾から緋縮緬がはみ出した。