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けんきょうじゅなん

剣侠受難

国枝 史郎

「東京日日新聞」1926(大正15)年5月28日~11月14日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 195,479 字 · 394 页

青空文庫

……もっとも巻軸はうまうまと……」

「丸橋氏」と三郎兵衛がとめた。

「これでお暇いたそうかな」

「それがよろしい。しからばこれにて」

「ご免くだされ、袴氏」

タラタラと五人肩を揃え、スッと小路へ消えてしまった。その素早さ、あとはシーン!

大地へぶっ坐った袴広太郎、しばらくは立ち上がらなかった。

「なるほどなあ。かなわない筈だ。五人ながら江戸の一流、わけても丸橋柴田ときては、匹儔のない名人だ。一人と一人立ち合ってもこっちには、微塵勝ち目はない。それが五人に掛かられたんだからなあ。よくそれでも闘ったものだ。負けっぷりがいいのでほめられたが、いやほめられるにも色々あるわい。……それはそうとイスラエルのお町、そんな素姓の妖婦かしら? 事情を打ち明けおれがたのむと、最初はいかにも案外らしく、じっと俺の顔を見詰めたが、『島原城之介のおり場所も、また巻軸のあり場所も、ほぼ見当がついております。そうして妾達にとりましても、その巻軸は重大な物。余人などへは渡せませぬが、事情を聞けばお気の毒。お京様とやらのお命にも、かかわりあると承ってみれば、うっちゃって置くことも出来ますまい。