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ことうのおに

孤島の鬼

江戸川 乱歩

「朝日」博文館、1929(昭和4)年1月号~1930(昭和5)年2月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 181,795 字 · 359 页

青空文庫

神と仏

も、丈五郎は、遂に再び姿を見せなかったのである。

神と仏

先程から、たっぷり三十分はたっているので、もう大丈夫だろうと、私は岩蔭に身を潜めたまま、思い切って、小さく口笛を吹いて見た。諸戸を呼出す合図である。

すると待構えていた様に、蔵の窓に諸戸の顔が現われた。

岩蔭から首を出して、大丈夫かと目で尋ねると、諸戸が肯いて見せたので、私は用意の手帳を裂いて、手早く丈五郎の不思議な仕草について書き記し、その辺の小石を包んで、窓を目がけて投込んだ。

暫く待つと諸戸の返事が来た。その文句は大体左の様なものであった。

「僕は君の手紙を見て、非常な発見をした。喜んで呉れ給え。僕等の目的の一つは、間もなく成就することが出来相だ。又、僕の身にさし当り危険はないから安心し給え。詳しく書いている暇はないから、ただ君にして貰い度いこと丈け書く。それによって、君は充分僕の考を察することが出来よう。

1、危険を冒さぬ範囲で、この島のあらゆる隅々を歩き廻り、何か祭ってあるもの、例えば稲荷様の祠とか、地蔵様とか、神仏に縁あるものを探し出して、知らせて下さい。

2、近い内に諸戸屋敷の傭人達が、何かの荷物を積んで、舟を出す筈だ。