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ことうのおに
孤島の鬼
江戸川 乱歩
「朝日」博文館、1929(昭和4)年1月号~1930(昭和5)年2月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 181,795 字 · 359 页
東京あたりでは一寸見られぬ様な、古風な珍らしい型だ。
土蔵の二階には天井が張ってないだろうから、あの鬼瓦をはがせば、屋根板一枚の下はすぐ、諸戸道雄の幽閉された部屋である。危い危い、頭の上で恐ろしい企らみが行われているとも知らず、諸戸はあの下でまだ眠っているかも知れない。と云って、あの怪物のいる前で、口笛を吹いて合図をすることも出来ず、私はイライラするばかりで、何とせん術もないのである。
やがて、丈五郎はその鬼瓦をすっかりはずして小脇に抱えた。二尺以上もある大瓦なので、片輪者には、抱えるのもやっとのことである。
さて、次には鬼瓦の下の屋根板をめくって、道雄と双生児の真上から、丈五郎の醜い顔がヒョイと覗いて、ニヤニヤ笑いながら、愈々残虐な殺人にとりかかる。
私はそんな幻を描いて、脇の下に冷汗を流しながら、立竦んでいたのだが、意外なことには、丈五郎は、その鬼瓦を抱えたまま、屋根の向側へおりて行ってしまった。邪魔な鬼瓦をどこかに運んで置いて、身軽になって元の所へ戻って来るのだろうと、いつまで待っても、そんな様子はないのである。
私はオズオズと塀の蔭から例の岩の所まで進んで、そこに身を隠して、なおも様子を窺っていたが、その内に朝もやはすっかりはれ渡り、岩山の頂から大きな太陽が覗き、土蔵の壁を赤々と照らす頃になって